子宮頸がんは子宮の「出口」にできるがんです。その「前がん病変」は、子宮頸部異形成(上皮内腫瘍:CIN)と呼びます。「前がん病変」とは、「今はがんではないが、将来がんに移行するかもしれない状態」と言えます。
子宮頸部異形成は病変の程度によって、CIN1(軽度異形成)、CIN2(中等度異形成)、CIN3(高度異形成・上皮内がん)の3段階に分類されます。
近年、子宮頸がん・子宮頸部異形成のいずれも20~30歳代の若い女性に急激に増加しています。また高齢化に伴い、70歳代以降の女性にも子宮頸がんが増加傾向があることが指摘されています。
子宮頸がん・子宮頸部異形成の主たる原因は、性交渉により感染する「ハイリスク型のヒトパピローマウイルス(HPV)」の持続感染です。大多数の女性が一度はHPVに感染しますが、通常は免疫力によりHPVは排除され、多くは自然消失します。しかし一部の女性では持続的に感染が続き、数年から10数年を経て、CIN1→CIN2→CIN3→子宮頸がんへと段階的に進展することがわかっています。
HPVの持続感染は、喫煙者、低用量ピルの長期内服、性交渉のパートナーが多い、という女性に起きやすいということもわかっていますので、注意が必要です。ハイリスク型HPVのうち、16型、18型、31型、33型、35型、45型、52型、58型は日本人女性において特に注意が必要なタイプで、これらが子宮頸がんのおよそ9割の原因となっていると考えられます。
子宮頸がんは腫瘍が大きくなってくると、不正性器出血やおりもの異常を生じますが、子宮頸部異形成や初期の子宮頸がんは自覚症状を示さないことがほとんどであり、多くは子宮頸がん検診で発見されます。言い換えれば、子宮頸がん検診を受けなければ、子宮頸部異形成や初期の子宮頸がんの早期発見は困難です。