がん遺伝子診断|こみやまレディースクリニックあざみ野|青葉区・女性医師の産婦人科

〒225-0011神奈川県横浜市青葉区あざみ野2-4-2 メディカルプラザあざみ野駅西口2F
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がん遺伝子診断・がんゲノム外来

がん遺伝子診断|こみやまレディースクリニックあざみ野|青葉区・女性医師の産婦人科

  • がんの遺伝子診断
  • 個別化医療
  • 精密医療
  • Guardant360
  • Guardant Reveal ctDNA検出システム
  • がんリスク検診
  • 婦人科がんの遺伝子検査
  • 遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)
  • BRCA1/2遺伝子検査
  • 遺伝カウンセリング

がんゲノム医療とは?

がんゲノム医療とは?

がんゲノム医療とは、がん細胞のゲノムを調べて、遺伝子の変化をもとに患者さん一人ひとりのがんの性質を知り、適切な治療を選択することです。同じ日本人でも、大きな人・小さな人、丈夫な人・病弱な人など、様々な個体差があるように、がんにも様々な個体差があることがわかってきました。その個体差を決めているのが、ゲノム(遺伝情報)なのです。

がんの「ゲノム」と「遺伝子」

がんの「ゲノム」と「遺伝子」

ゲノムとは、一人ひとりが持っている遺伝情報のことです。ゲノムの本体となるのがDNAで、ヒトゲノムのDNAは32億塩基対と言われています。このうち、タンパク質の設計図の部分を「遺伝子」と呼びます。ヒトゲノムには約23,000個の遺伝子が含まれています。遺伝子を元に作られた「タンパク質」が身体の中でいろいろな働きをしています。そのため、遺伝子に異常が生じると正しいタンパク質が作られず、ひいては病気の原因になります。近年の研究から、がんも遺伝子の異常が原因で起こる病気であることが判明しました。がんは様々な遺伝子が異常を来すことにより、「正常な細胞」が「がん細胞」に変化することによって起こるのです。がんを引き起こしやすい原因となる遺伝子を「がん関連遺伝子」といい、現在までに200個以上の重要ながん関連遺伝子が見つかっています。

がんの遺伝子診断とゲノム医療

当院では最先端医療であるがん遺伝子パネル検査(包括的がんゲノムプロファイリング検査)およびがんctDNA 検出システムを用いたがんの遺伝子診断を行っています。これらの検査に基づく医療は、究極の「個別化医療」「オーダーメイド医療」「精密医療」と言えます。
当院の副院長はがん治療のエキスパートであると同時に、ゲノム医療のスペシャリストです。大学病院などで行っている質の高いがんゲノム医療と同等レベルの検査を、身近で受けることができます。当院はレディースクリニックですが、がん遺伝子診断は性別に関係なく、がん種に関係なく実施しますので、お問い合せください。

がん遺伝子パネル検査(包括的がんゲノムプロファイリング検査:CGP)

  • がんの遺伝子異常を調べる検査です。
  • 血液中に存在するがん関連遺伝子の異常を次世代シークエンサー(NGS)という装置を使い、まとめて(包括的に、網羅的に)調べます。
  • この検査によって遺伝子の異常が見つかれば、がん自体の性格(特徴)や悪性度(がんの中でもよりタチが悪いか否か)を知ることができるだけでなく、治療効果が期待できる薬剤を選択することが可能です。つまり、より個別化した対応が可能になるのです。

がんctDNA検出システム

  • がん細胞から放出された微量のDNAを調べる検査です。
  • 血液中のセルフリー DNA から次世代シークエンサー(NGS)を用いて⾎中循環腫瘍 DNA(ctDNA)を測定します。
  • この検査によって、がん治療後の微小残存病変の検出、手術や抗がん剤治療の治療効果の判定、再発リスクの評価、等が可能になります。
  • このctDNA検出システムは、従来の検査(CT、MRI、PET、腫瘍マーカーなど)よりも低侵襲かつ早期に診断することができる全く新しい検査法です。

がん遺伝子パネル検査とがんctDNA検出システムの実際

がん遺伝子パネル検査とがんctDNA検出システムの実際

当院では最先端の医学であるがん遺伝子パネル検査(包括的がんゲノムプロファイリング検査)として「Guardant360®」を、がんctDNA検出検査として「Guardant RevealTM ctDNA検出システム」を、それぞれ実施します。これらにより、がんの性質の診断、がん治療への応用(抗がん剤や分子標的薬の選択)、再発の早期診断等が可能になります。これらはいずれも血液検査で行えるため、非常に簡便で侵襲性が低い上に、検査提出から結果の判明までおよそ3週間と非常に早く情報を得ることができます。なお「Guardant360®」および「Guardant RevealTM ctDNA検出システム」は自由診療(自費診療)となります。

Guardant360®

  • 血液検体を用いたがん遺伝子パネル検査(包括的がんゲノムプロファイリング検査)です。
  • セルフリーDNAが5ng以上あれば十分な検出能を示す非常に感度の高い検査です。
  • 固形がんにおいて739個のがん関連遺伝子の異常を一括で(包括的に)調べます。
    現時点で重要と考えられる遺伝子はほぼすべて網羅されていると言えます。
  • 腫瘍遺伝子変異量(tumor mutation burden : TMB)を調べることが可能です。
  • マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability: MSI)を調べることが可能です。
  • あらゆる固形がんで有用です。
  • 婦人科がんにおいても非常に有用です。
  • 初発、再発、のいずれの時期にも検査することが可能です。
  • 血液検査なので、何回でも実施することが可能です。
  • 男女を問わず実施できます。

Guardant RevealTM  ctDNA 検出システム

  • がん細胞から血液中に放出された微量のDNA(ctDNA)を検出する検査です。
  • 肺がん、乳がん、大腸がん、においてそれぞれ有用です。
  • 血液検査なので、何回でも実施することが可能です。
  • 男女を問わず実施できます。

このような方が当院のがん遺伝子検査に向いています

このような方が当院のがん遺伝子検査に向いています

当院でがん遺伝子検査を受ける恩恵が大きいと考えられるのは、以下のいずれかに該当する方です。性別に関係なく、がん種に関係なく実施しますので、お問い合せください。

  • 婦人科がん(子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌、卵管癌、原発性腹膜癌、子宮肉腫)と初回診断されたすべての方
  • 婦人科がん(子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌、卵管癌、原発性腹膜癌、子宮肉腫)が再発したと診断されたすべての方
  • がん(臓器は問わない)と診断されたが、自分のがんの性格や特徴をより詳しく知りたい方
  • がん(臓器は問わない)と診断され、これから初回治療(標準治療)を開始するところだが、通り一遍の治療でなく、より最先端でより精密な治療や管理を希望する方
  • がんと診断され根治手術を受けたが、再発のリスクをより詳しく知りたい方(特に、肺がん、乳がん、大腸がん、と診断された方)
  • がんが再発したと診断され、今後の治療方針に迷われている方
  • がんが再発したと診断され、いくつかの治療を受けたが、もう治療法がないと言われた方
  • がんと診断されたが、標準治療が存在しないと言われた方
  • がんと診断されていないが、血縁者にがんの方が多いので、自分も心配である
  • がんと診断されていないが、健康リテラシーが高く、自身のがんのリスクを調べたい

婦人科がんはがん遺伝子診断の有益性が非常に高いです

婦人科がん患者の方は以下のような特徴があることから、がんゲノム医療との相性が非常に良いと言えます。

婦人科がん患者は全身状態が良好な方が多く、様々な治療を許容できる
●特に卵巣がん患者は一般に治療経過が長くなり、標準治療のみならずその他の治療を検討することが多い
●がんの病勢を制御できれば、万が一がんが根治できなくても、長期の担癌生存(がんと共に生きる)が期待できる
●個別の遺伝子異常(ドライバー遺伝子の異常)を認めなくても、ゲノムの不安定性(LOH、HRD)やマイクロサテライト不安定性(MSI-high)や腫瘍遺伝子変異量増多(TMB-high)を示すことが多く、これらの異常は有効な分子標的薬治療や免疫チェックポイント阻害薬治療に結びつきやすい
●婦人科がん患者では、遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)やLynch症候群(子宮体癌)をしばしば認めることから、二次的所見が得られた場合は、血縁者のがんのリスク評価や早期発見にも寄与できる
●子宮肉腫は”希少がん”であり、そもそも標準治療が存在しない

よって婦人科がんにおいては、がんの遺伝子診断を行う有益性が非常に高いのです。

がんゲノム外来

なぜ当院で「がんゲノム外来」を行うか?

私(副院長)は大学病院(がん診療拠点病院かつがんゲノム医療連携病院)において、日々がんの診断・治療を行い、さらにがんゲノム医療にも従事し、多くの患者さんに最適で最新の医療を提供しています。しかし、がんゲノム医療やがんの遺伝子診断は、まだまだ身近な医療とは言えず、その恩恵に預かることのできない患者さんが多数存在することを常々憂いておりました。
 がん治療の原則は、最適な治療を、最初から行うことです。手術も、抗がん剤も、放射線治療も、分子標的薬も、免疫チェックポイント阻害剤も、抗体薬物複合体(ADC)も、「早い段階」のほうが治療強度を高めることが可能であり、より治療効果を上げることができます。そして「早い段階」のほうが患者さん自身の体力や全身状態が保たれており、強い治療にも耐えられます。
 一方でがんは再発するとよりタチの悪い(より悪性度の高い)タイプに変化するので、治療が効きにくくなります(これを耐性と言います)。また患者さん自身も、がんの経過が遅い段階になればなるほど、身体が疲弊してくるばかりでなく、それまでの治療による副作用や合併症により、強い治療に耐えられなくなってきます。
 さらに近年の研究により、がんは遺伝子異常の違いによりその性格や予後が大きく異なることが判明し、遺伝子異常の相違を踏まえて、個々の患者さんごとに治療や管理を最初から個別化するべきだということがわかってきました。つまり、がんの経過の「早い段階」からがんの遺伝子診断を行い、その性格や予後の良し悪しを踏まえ、より治療効果の高い治療を、初回からガッチリ行い、その後の管理もしっかり行うほうが理にかなっているのですがん治療において”良い治療は後から行う”というのは、戦争における”戦力の逐次投入”と同様に、戦術としては不適切です。
 しかし保険診療で行われるがんゲノム医療は、その適応が「再発後の難治性がんで標準治療が終了した方」という規定があり、ごく限られた患者さんにしか届けることができないと同時に、がんの経過の「かなり遅い段階」にならないと導入することができないという大きな欠点があります。つまりより早い段階から行ったほうが効果の高いがんゲノム医療は、現実の保険診療では一切できないということなのです。
 保険診療にとらわれず、もっと早い段階から、もっと身近に、もっと積極的に、がんゲノム医療やがんの遺伝子診断に基づく医療を提供したいという思いから、「がんゲノム外来」を開設しました。

当院の「がんゲノム外来」の意義

当院の「がんゲノム外来」は、最先端医療であるがん遺伝子パネル検査やがんctDNA 検出システムを用いて、がんの遺伝子診断を行い、その結果を実際の医療に反映するための”提言”を行う外来です。当院で行った遺伝子診断の結果に基づいて、現在おかかりの医療機関で行っている治療に反映していただくアドバイスをさせていただきます
 保険診療でがんゲノム医療を実施できる施設は非常に限られており、それらの施設以外では現実的に実施困難です。当院で検査を行うことによって有益な情報が得られた場合は、患者さんとおかかりの医療機関にその情報を適切に開示しますので、実際の診断や治療に取り入れていただくことが可能です。検査結果に加えて、がんゲノム医療の専門家としての意見や提案を「診療情報提供書」としてお渡しいたしますので、それに基づいて主治医と十分に相談し、より良い医療を行っていただければ幸いです

がんゲノム外来の流れ

当院のがんゲノム外来の流れを以下にお示しします。当院はレディースクリニックですが、がんゲノム外来は性別に関係なく、がん種に関係なく、受診していただくことができます完全予約制ですので、あらかじめ電話でのご予約をお願いします。なお、がんゲノム外来は原則として自由診療(自費診療)となります。

*費用については「料金表」をご覧ください。

1

検査前のカウンセリング(所要見込時間:30分~60分)

  • 症状の確認:患者さんのがんの診断やこれまでの経過を詳しく確認します。
  • 他院で治療中の方:可能ならば、現在おかかりの医療機関からの「診療情報提供書」をご持参ください。
  • 検査の説明:がんの遺伝子検査に関する利点・欠点・費用などを詳しく説明します。がんの種類や患者さんの状態によっては、検査自体の意義が乏しい場合もあるので、検査をすべきか否かについても十分に検討いたします。
2

検査の手順(所要見込時間:3分)

  • 検査承諾書へのサイン:検査に同意した旨、所定の承諾書にサインをお願いします。
  • 血液の採取:静脈より約20mlの血液を採取します。
  • 次回外来の予約:3週間後以降に再来していただきます。
3

検査結果の説明(所要見込時間:60~90分)

  • 検査結果の説明:文書を用いて詳細に説明します。また推奨される治療や管理についても詳細にアドバイスいたします。
  • 診療情報提供書の作成:現在おかかりの医療機関がある場合には、検査結果や推奨される医療についての診療情報提供書を作成し、お渡しします(別途郵送でお送りする場合がありますのでご了承ください)。

がんの遺伝子検査の注意点

がん遺伝子パネル検査(包括的がんゲノムプロファイリング検査)やがんctDNA検出システムには利点が多い反面、以下のような注意点があります。よって検査を行う際は、これらも踏まえた上で実施する必要があります。

  • 遺伝子の異常が見つかっても、効果が期待できる薬剤に結びつかない場合があります
     その遺伝子異常を標的とした薬剤が国内に導入されていない場合は、残念ながら治療に反映することはできません。いわゆる”ドラッグ・ラグ”と言われる問題で、海外の臨床試験で有効性が証明されているにも関わらず、わが国で未認可のため使用できない薬剤が多いからです。また遺伝子異常の種類によっては、そもそもそれを標的とした薬剤がいまだに開発されていないものも存在します。一方で保険診療で使用できる薬剤が見つからなくても、国内で臨床試験や治験が行われている薬剤に結びついた場合は、その詳細をお知らせし、アクセス可能か否か検討します。

  • 遺伝性腫瘍の原因となる遺伝子異常が見つかる可能性があります
     がん関連遺伝子の中には、がんの発生に強く関係し、しかも血縁者にその遺伝子異常が伝わるものが存在します。そのような遺伝子異常は親から子へ、子から孫へと伝わっていき、ある種のがんを高率に発症しやすくします。このようながんを「遺伝性腫瘍」と言います。代表的な遺伝性腫瘍には、以下のような疾患群があります。
    リンチ(Lynch)症候群・・・家系内に大腸がん、子宮体がん等が高率に発症する
    遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)・・・家系内に乳がん、卵巣がん等が高率に発症する
     
     がん遺伝子パネル検査を行うことによって、このような遺伝子の異常(それを「 二次的所見」と称します)が偶然に見つかってしまう場合があります。よって検査を受ける上では、そのような可能性を踏まえて、ご家族の方ともご相談ください。ただし、ご自身の病気に関すること以外の検査結果は、ご希望がなければお知らせしません。さらに当院の副院長は国内でも数少ない遺伝性腫瘍専門医ですので、必要に応じてご家族へのカウンセリングや今後の対応について、詳しくアドバイスさせていただきます。

  • がん遺伝子検査は高額です
     国内外の多くの医療機関における一般的ながん遺伝子パネル検査は、自由診療(自費診療)でおよそ500,000~700,000円、保険診療でもおよそ170,000円(保険定価560,000円の3割負担の例)と、非常に高額です。また保険診療ではひとりの患者にわずか1回しか実施することができません。
     ちなみに保険診療でがん遺伝子パネル検査が実施できるのは、国内でおよそ230施設の指定された医療機関のみであり、必ずしも敷居が低いとは言えない上に、身近ではありません。

    あきらめない婦人科がん医療

    婦人科がん患者の方は以下のような特徴があることから、がんが再発してしまってもその後に適切な治療を受けることによって、長期間の延命を望むことが可能です。

     ●婦人科がん患者は全身状態が良好な方が多く、様々な治療を許容できる
     ●特に卵巣がん患者は一般に再発後の生存期間が長く、治療意欲も高い
     ●がんの病勢を制御できれば、長期の担癌生存(がんと共に生きる)が期待できる
     ●個別の遺伝子異常を認めなくても、ゲノムの不安定性(LOH、HRD)やマイクロサテライト不安定性(MSI-high)や腫瘍遺伝子変異量増多(TMB-high)を示すことが多く、有効な分子標的薬治療や免疫チェックポイント阻害薬治療に結びつきやすい
     ●婦人科がん患者では、遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)やLynch症候群(子宮体癌)をしばしば認めることから、二次的所見が得られた場合は、血縁者のがんのリスク評価や早期発見にも寄与できる
     ●子宮肉腫は”希少がん”であり、そもそも標準治療が存在しない

    よって、婦人科がんはがんゲノム医療との相性が非常に良いと言えます。そして、がんが再発してからもあきらめずに治療法を模索することは意義が大きいと考えられます。

    あきらめない婦人科がん医療」の身近な相談先として、当院のセカンドオピニオン外来およびがんゲノム外来をご活用ください。

    遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)

    遺伝性乳がん卵巣がんとは?

    遺伝性乳がん卵巣がんとは?

    遺伝性乳がん卵巣がん(Hereditary Breast and Ovarian Cancer:HBOC)は、遺伝性乳がんおよび遺伝性卵巣がんの総称です。乳がんや卵巣がんになりやすい遺伝子の異常を生まれつき持っている家系の女性は、一般の人よりも高い確率でこれらのがんが発症します。この遺伝子異常は、親から子へ、子から孫へと受け継がれていきます。よって、おばあちゃん、お母さん、おばさん、姉妹、娘に乳がんや卵巣がんを発症した人が何人かいる場合は、HBOCを疑う必要があります。一般に、乳がん全体の約5%、卵巣がん全体の約15%が、HBOCと言われています。

    遺伝性乳がん卵巣がんの原因は?

    HBOCの原因遺伝子は、BRCA1遺伝子もしくはBRCA2遺伝子の異常です(生殖細胞系列の病的バリアントと言います)。BRCA1もBRCA2も、DNAにキズ(損傷)が生じたときに、それを修復する機能を持っているため、生まれながらにこれらの機能に異常がある場合は、DNAの損傷が修復されにくく、遺伝子の異常が蓄積し、がんになりやすくなります。BRCA1もしくはBRCA2遺伝子の異常があると、乳がんや卵巣がんになりやすいだけでなく、膵臓がんや前立腺がんにもなりやすいことが知られています。BRCA1やBRCA2の生まれながらの病的バリアントを両親のうちのどちらかが保有していると、それを子が受け継ぐ確率は50%(2分の1)です。このような遺伝形式を常染色体顕性遺伝と呼びます。

    遺伝性乳がん卵巣がんの特徴は?

    ご自身もしくは血縁者が以下の項目に当てはまる場合は、HBOCの可能性を考慮します。

    乳がんと診断されていて、かつ以下のいずれかに該当する
    • 45歳以下で乳がんと診断された
    • 両側の乳がんと診断された
    • 片方の乳房に複数の乳がんと診断された
    • 60歳以下で、トリプルネガティブの乳がんと診断された
    • 血縁者に乳がん、卵巣がん、膵臓がんと診断された方がいる
    • 男性で乳がんと診断された
    卵巣がん・卵管がん・腹膜がんと診断された
    膵臓がんと診断されていて、かつ以下に該当する
    • 血縁者に、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、悪性黒色腫のいずれか診断された方が2人以上いる
    前立腺がんと診断されていて、かつ以下に該当する
    • 血縁者に、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、悪性黒色腫のいずれか診断された方が2人以上いる
    がん遺伝子パネル検査(包括的がんゲノムプロファイリング検査)の結果、BRCA1もしくはBRCA2の遺伝子異常を指摘された
    血縁者がBRCA1もしくはBRCA2の遺伝子異常を指摘された

    遺伝性乳がん卵巣がんの診断は?

    遺伝性乳がん卵巣がんの診断は?

    HBOCの診断は、BRCA1およびBRCA2遺伝子の異常(生殖細胞系列における病的バリアントの有無)を血液検査で調べます。これを「BRCA1/2遺伝学的検査」と呼びます(BRCA1/2遺伝子検査・ BRACAnalysis診断システム)。BRCA1/2遺伝学的検査には以下の2つがあります。

    • BRCA1およびBRCA2遺伝子の全体を調べる…家系内で最初に検査を受ける方
    • BRCA1およびBRCA2遺伝子の一部分を調べる(シングルサイト検査)…すでにHBOCと確定している方の血縁者

    検査結果は以下の3つのパターンで判定されます。

    • 病的バリアントあり(陽性)
    • 病的バリアントなし(陰性)
    • 臨床的な意義が不明のバリアントあり(variant of uncertain significance:VUS)

    陽性の場合をHBOCと確定診断します。VUSは現時点では陰性の扱いとなりますが、将来多数のデータが集積され、その意義が明らかとなった場合、病的バリアントに変更となる可能性があります。

    BRCA1/2遺伝学的検査で陽性(病的バリアントあり)と診断されたら、必ずがんを発症する?

    必ず発症するわけではありませんしかし、一般の人に比べると、かなり高い確率で発症すると言えます。

    乳がんにかかる


    リスク
    卵巣がんにかかる


    リスク
    一般的な日本人  生涯でおよそ10% 生涯でおよそ2%
    BRCA1


    陽性
    70歳までにおよそ60% 70歳までにおよそ40%
    BRCA2


    陽性
    70歳までにおよそ50% 70歳までにおよそ20%

    遺伝性乳がん卵巣がんと診断されたらどうする?

    HBOCと診断する意義は、以下の3つです。

    1. ご自身の計画的ながん検診(サーベイランス)やリスク低減を行う
      一般の方よりもきめ細やかな検診(サーベイランス)を行い、がんの早期発見に努めたり、ホルモン剤による予防、さらにはリスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)やリスク低減乳房切除術(RRM)を行う場合もあります。
    2. 治療に生かす
      BRCA陽性の場合、PARP阻害薬という分子標的薬が非常によく効くため、治療に生かすことができます(コンパニオン診断)。
    3. 血縁者への対応に生かす
      血縁者も陽性だった場合、計画的なサーベイランスやリスク低減を考慮します。

    遺伝性乳がん卵巣がんの検査や診断を受けるデメリットは?

    BRCA1/2遺伝学的検査も万能ではありません。以下の限界に留意する必要があります。

    • 現在の解析技術では見つけることができない病的バリアントを有する可能性はゼロではない
    • BRCA以外の遺伝子にがんの発症と関連している病的バリアントを有する可能性がある
    • 病的バリアントが見つかっても、実際にがんを発症するか否かや、いつ発症するかを予測することはできない

    HBOCと診断されても100%がんを発症するわけではありませんし、診断されたことにより不安や差別が生じる可能性もあります。さらに「知らない(知りたくない)権利」もあります。よってひとり一人の生き方やポリシーを尊重して対応する必要があります。その際には、HBOCに関する専門的知識を持った医療者と十分に相談しながら行うことが肝要です(これを遺伝カウンセリングと呼びます)。

    遺伝カウンセリングの実際

    遺伝カウンセリングの実際

    遺伝カウンセリングは、相談者がHBOCについて十分に理解し、自らの意思で選択し行動できるように支援する場です。以下のような流れで行います。

    1. 本人や家族の病歴などの確認
    2. HBOCの説明、BRCA1/2遺伝学的検査の説明
    3. 検査の結果説明
    4. サーベイランスやリスク低減手術に関する相談
    5. 血縁者への対応の相談

    BRCA1/2遺伝学的検査の費用は?

    以下の条件を満たし、HBOCが疑われる場合は、保険診療で検査を行うことが可能です。 (3割負担:およそ6万円、2割負担:およそ4万円、1割負担:およそ2万円)

    • 45歳以下で乳がんと診断された
    • 60歳以下でトリプルネガティブの乳がんと診断された
    • 両側の乳がんと診断された
    • 片方の乳房に複数の乳がんを診断された
    • 男性で乳がんと診断された
    • 卵巣がん・卵管がん・腹膜がんと診断された
    • 自身が乳がんと診断され、血縁者に乳がんまたは卵巣がんまたは膵臓がん発症者がいる
    • がん発症者でPARP阻害薬に対するコンパニオン診断を行う場合

    上記に当てはまらなくても、既往歴や家族歴からHBOCが疑われることがありますが、その場合のBRCA1/2遺伝学的検査は自費診療となります(およそ20万円)。
    また血縁者がBRCA遺伝子に病的バリアントを持っていても、ご本人が乳がん、卵巣がんのいずれも発症していない場合は、自費診療となります(およそ20万円)。血縁者ですでにわかっている遺伝子の一部の領域のみを解析する場合(シングルサイト検査)も、自費診療です(およそ7万円)。
    BRCA1/2以外の多数のがん関連遺伝子の異常を網羅的に調べられる検査として、がん遺伝子パネル検査(包括的がんゲノムプロファイリング検査)がありますが、原則として自費診療となります(調べる遺伝子の数によって異なり、およそ30~70万円)。

    遺伝カウンセリングについても費用が発生します。
    保険診療ではおよそ1,000円(1割負担)~およそ3,000円(3割負担)、自費診療ではおよそ5,000円~10,000円です。

    なお健康保険が適用となるBRCA1/2遺伝子検査の費用は、高額療養費制度の対象となりますので、自己負担額を超える部分は還付されます。
    横浜市では2024年度よりHBOC診療に対する検査費等助成事業が始まりました。これは自費診療で行われる検査や遺伝カウンセリングの費用の一部を横浜市が助成する制度です。詳細は下記の横浜市のWEBサイトをご参照ください。

    当院では遺伝性乳がん卵巣がんに取り組んでいます

    婦人科腫瘍専門医と遺伝性腫瘍専門医の両ライセンスを有し、がんゲノム医療やがん遺伝子診断にも詳しい副院長が、HBOCについて皆様のご相談に応じます。加えて当院ではBRCA1/2遺伝子検査を含むBRCA遺伝学的検査と遺伝カウンセリングをいずれも実施することが可能です。自由診療の検査はもちろんのこと、保険診療での検査も可能です。通常は大学病院やがん専門病院等を受診しなければ相談することは不可能ですが、身近なクリニックで検査もカウンセリングもどちらも一カ所で受けることができるのです。まずはお気軽にお問い合せください。

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