子宮頸部異形成とその治療(特にレーザー治療)
- 2024年1月20日
- 子宮頸がん関すること
子宮頸部異形成とは?
子宮頸がんは子宮の「出口」にできるがんです。その「前がん病変」を、子宮頸部異形成(上皮内腫瘍:CIN)と呼びます。「前がん病変」は「将来がんに進むかもしれない」状態と言えます。
子宮頸部異形成は病変の程度によって、CIN1(軽度異形成)、CIN2(中等度異形成)、CIN3(高度異形成・上皮内がん)の3段階に分類されます。近年、子宮頸がん・子宮頸部異形成のどちらも20~30歳代の若い女性に急激に増加しています。また高齢化に伴い、70歳代以降の女性にも子宮頸がんが増加していることが指摘されています。
子宮頸がん・子宮頸部異形成の主たる原因は、性交渉により感染する「ヒトパピローマウイルス(HPV)」の持続感染です。大多数の女性がHPVに感染しますが、通常は免疫力によりHPVは排除され、多くは自然消失します。しかし一部の女性では持続的に感染が続き、数年から10数年を経て、CIN1→CIN2→CIN3→子宮頸がんへと段階的に進展することがわかっています。
HPVの中でも特にがんに進行するリスクが高いタイプをハイリスク型HPVと呼びますが、なかでも、16型、18型、31型、33型、35型、45型、52型、58型は日本人女性において特に注意が必要なタイプで、これらが子宮頸がんのおよそ9割の原因となっていると考えられます。
子宮頸部異形成や初期の子宮頸がんは自覚症状を示さないことがほとんどであり、多くは子宮頸がん検診で発見されます。言い換えれば、子宮頸がん検診を受けなければ子宮頸部異形成や初期の子宮頸がんの早期発見は困難です。
子宮頸部異形成のレーザー治療
子宮頸部異形成の治療法は手術療法です。残念ながら薬物療法はありません。代表的な手術は、子宮頸部円錐切除術と子宮頸部レーザー蒸散術(レーザー照射治療)です。いずれも腟からの手技なので、お腹にキズは残りません。その後の妊娠・出産も可能です。
当院では、以下の場合に対してCO₂(炭酸ガス)レーザーを用いた子宮頸部レーザー蒸散術を行います。
①子宮頸部高度異形成(CIN3)の一部
②ハイリスク型HPV陽性の子宮頸部中等度異形成(CIN2)
③長期に遷延する子宮頸部中等度異形成(CIN2)
④長期に遷延するハイリスク型HPV陽性の子宮頸部軽度異形成(CIN1)
レーザー蒸散術は円錐切除術と異なり、「切らない手術」なので、術中術後の合併症やその後のトラブル(術後の頸管狭窄による生理異常、妊娠した場合の流産・早産・絨毛羊膜炎など)が明らかに少ないことが知られています。よって妊娠を希望する若い女性をはじめ、いろいろな年齢層の女性にとってメリットの大きい手術です。しかも入院は不要で、外来で日帰り手術として行うことができるのです。また何度でも繰り返し行うことができるという利点もあります。ただしレーザー蒸散術は、組織診による確定診断とコルポスコピーで病変全体が確認できること(可視範囲内)が条件となります。上記の①~④以外であっても、長期間の経過観察が困難な場合や、患者さんの治療希望が強い場合には、レーザー治療を考慮します。
他院で子宮頸部異形成の診断がつき、当院での治療を希望される場合は、あらかじめ電話でご相談ください。病状によっては、来院当日の”即日レーザー治療”も可能です。なお、子宮頸部レーザー蒸散術は保険診療(保険適用)です。
文責 小宮山慎一
こみやまレディースクリニックあざみ野副院長
東邦大学医学部産科婦人科学准教授
慶應義塾大学医学部産婦人科学客員准教授