横浜市の子宮頸がん検診が変わります
- 2025年1月14日
- 婦人科がんに関すること,フェムテックに関すること,子宮頸がん関すること
これまで横浜市の公費助成による子宮頸がん検診は細胞診のみで行われてきましたが、2025年1月より一部が変わります。
子宮頸がんの原因のおよそ90%を占めるハイリスク型のヒトパピローマウイルス(HPV)に感染しているかどうかを調べる検査(HPV検査)を、検診の一つの手段として実施することになったのです。下記のように年齢によって、検診方法(検査法)が変わります。
細胞診もHPV検査も、子宮頸部(子宮の出口)をこすって細胞を採取するので、やり方は同じです。細胞診は採取した細胞の形態を顕微鏡で検査するのに対し、HPV検査は採取した細胞にHPVが感染しているかどうかをDNAレベルで調べます。検査法によって費用が異なるため、自己負担額も異なります。
HPV検査が陰性の場合は、次の検診は5年後となり、細胞診より間隔が伸びます。HPV検査が陽性の場合は、原則として精密検査が必要です。
精密検査の方法は、コルポスコピー(拡大鏡診)および組織検査/生検(病理検査)で、細胞診で異常を認めた場合と同じ内容です。
検査で異常があった場合は、高次施設に紹介となり、そちらで精密検査となる場合が多いのですが、当院では「婦人科がん専門医」(婦人科腫瘍専門医かつ細胞診専門医)による質の高い精密検査を速やかに受けることができます。よって他施設に行く必要はなく、がん検診から精密検査まで1カ所で済ませられるのです。
HPV検査はメリットが大きい反面、デメリットもあります。また子宮頸がんの対策型検診としてのHPV検査単独法の導入は国内初であり、日本人におけるエビデンスが乏しい点(そもそも日本人はHPVワクチンの接種率が極めて低く、集団免疫が獲得されていない)、精度管理の妥当性の検証不足な点、さらには一般の産婦人科医への啓蒙やコンセンサスが得られていない点など、制度としての懸念事項も多く、婦人科がんの専門医としてはいささか憂慮しています。しかし既に走り始めた制度であり、当座は受診者への不利益のないように十分留意しつつ、慎重に対応しようと考えております。
ご自身の健康不安やヘルス・リテラシーに鑑みた場合、上記を踏まえ個別に対応を検討する必要がありますので、お気軽にご相談ください。
文責 小宮山慎一
こみやまレディースクリニックあざみ野副院長
東邦大学医学部産科婦人科学准教授
慶應義塾大学医学部産婦人科学客員准教授