はしか(麻しん、麻疹)に注意!!
- 2024年3月15日
- 感染症に関すること,妊活に関すること,フェムテックに関すること,妊娠に関すること,ワクチンに関すること
はしか(麻しん、麻疹)が世界的に増加の兆候があります。
東南アジア、西アジア、東地中海(アラブ・中東)、アフリカ、旧ソ連の各地域で感染が流行しており(図の濃茶色)、それらの地で感染した人が、移動により母国や他国へ持ち込む輸入感染例が多い状況です。
日本の各地でも感染者が確認されていますが、これらの流行国から帰国(入国)した感染者が持ち込んでいることが確認されています。
麻しんは麻しんウイルスによって引き起こされるヒト感染症で、感染から10~14日の潜伏期間で発症し、上気道炎症状、高熱、全身の発疹、という特徴的な症状があり、さらに重症化すると肺炎や脳炎(脳症)に至り、生命を脅かします。新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスと同様に、恐ろしいウイルス感染症と言えます。
日本では麻しんワクチンの定期接種により2015年以降、WHO(世界保健機関)より「麻しんは排除状態にある」ことが認定されていました。つまり日本国内の市中には麻しんウイルスはいないと言える状況が続いていたので、麻しんワクチンを接種していなければ、免疫を獲得していない可能性が高いと考えられます。
麻しんウイルスの特徴は、非常に感染力が強いことです。空気感染、飛沫感染、接触感染することから、まさに同じ空間にいるだけで感染します。マスク、手洗い、うがいだけでは予防効果に乏しく、発症した場合の特効薬もないことから、対処法はワクチンによる予防のみと言えます。
麻しんの罹患歴がなく、予防接種歴が明らかでない場合は、予防接種を検討してください。
また、麻しんの患者に接触した場合、72時間以内に麻しんワクチンの接種をすることで、発症を予防できる可能性があると言われています。
麻しん含有ワクチン(主に接種されているのは、麻しん風しん混合ワクチン=MRワクチン)を接種することによって、95%程度の人が麻しんウイルスに対する免疫を獲得することができます。2回接種がより効果的です。
特に若い女性の場合、MRワクチンを接種することによって「麻しん」を予防できるのみならず、胎児へ大きな影響をおよぼす「風しん」も予防できるので、まさに「一石二鳥」です。
ワクチン接種後の反応として多く見られる症状として発熱、発疹、鼻汁、咳嗽、注射部位紅斑・腫脹などがみられます。重大な副反応として、アナフィラキシー、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、脳炎・脳症、けいれん等が報告されていますが、いずれも頻度は低く、またワクチンとの因果関係が明らかでない場合も含まれています。
当院では麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)を常備しておりますので、ご相談ください。ただし需要ひっ迫の折、出荷調整を受けているため、ワクチンの在庫が極めて少ない状況です。鋭意確保を図っておりますので、ご了承いただければ幸いです。麻しん抗体検査についてはいつでも実施可能です。これらは老若男女を問わず実施できますので、パートナーやご家族ともどもご来院ください。
文責 小宮山慎一
こみやまレディースクリニックあざみ野副院長
東邦大学医学部産科婦人科学准教授
慶應義塾大学医学部産婦人科学客員准教授
(図の出典:厚生労働省 医療・健康「麻しんについて」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/measles/index.html)