子宮頸がん検診・精密検査・治療-当院はこれらの専門施設ですー
- 2025年6月5日
- 婦人科がんに関すること,子宮頸がん関すること
子宮頸がん検診を受けていますか?
20歳を超えたら、2年に一度は子宮頸がん検診を受けることをお勧めします。ちなみに横浜市の場合は、今年度より30歳~60歳の方は「HPV単独検診」が開始されました。詳しくはこちらをご覧ください。
子宮頸がん検診の流れ
子宮頸がん検診は、実施する施設を受診していただき、以下の流れで行います。
1.問診表に生理の様子や自覚症状の有無など記入
2.内診台で、①腟鏡による視診、細胞の採取(細胞診)、②内診、を行う
3.後日結果を確認する
内診台の診察は恥ずかしいですが、上記①②がわずか1~2分で終了しますので、少し辛抱してください。検査による痛みはほとんどありません。頸がん検診を受けた当日は、性交渉は避けてください。その他には何も日常生活の制限はありません。
ちなみに「自己採取による子宮頸がん検診」というものがありますが、これは大変危険な検査です。自己採取による子宮頸がん検診は、適切な部位から細胞が採取されないため、偽陰性(異常を見逃す)の確率が高くなります。加えて自己採取法の有用性に関するエビデンス(科学的証拠)は皆無です。「自己採取法」は行うべきではありません。
子宮頸がん検診の結果の意味
子宮頸がん検診の結果は以下のように判定され、いろいろなレベルがあります。
NILM(異常なし)と一部のASC-US以外は、精密検査が必要になります。ここで注意が必要なのは、「検査に引っかかった=子宮頸がん」というわけではないことです。あくまでも検診結果は推定のレベルであり、確定診断ではありません。
子宮頸がんの精密検査はコルポスコピーと生検
子宮頸がんの精密検査は、コルポスコピー(腟拡大鏡診)と生検(組織診)の両方です。専用の機器を用いて子宮の出口を観察し、病変部分を見つけ、そこから組織を採取します。組織をパチンとつまみ取るため(パンチ生検/狙い組織診)、若干の痛みを伴うことがあります。病変が頸管内(子宮口より奥のほう)にある場合は、掻爬(そうは)も併用されます。
コルポスコピーと生検には熟練した技術が必要です。そして熟練した専門医の行うコルポスコピーと生検は正確です。
精密検査の結果が「確定診断」となる
精密検査の結果により、診断(病気の名前)が確定します。
・頸管炎、扁平上皮化生
・軽度異形成(CIN1)
・中等度異形成(CIN2)
・高度異形成/上皮内癌(CIN3)
・上皮内腺癌(AIS)
・浸潤癌(扁平上皮癌/腺癌)
頸管炎、扁平上皮化生は「異常なし」です。腫瘍性変化はないので、安心して下さい。
子宮頸部異形成は「前がん病変」(がんになる前の段階)です。その程度により、軽度異形成(CIN1)、中等度異形成(CIN2)、高度異形成/上皮内癌(CIN3)に分類されます。原因はハイリスク型(がんに進行する可能性の高い)ヒトパピローマ・ウイルス(HPV)の感染です。
軽度異形成(CIN1)と中等度異形成(CIN2)の一部は「要注意サイン」です。定期的な検査によって、悪化してないかチェックする必要があります。
中等度異形成(CIN2)の一部*と高度異形成/上皮内癌(CIN3)・上皮内腺癌(AIS)は「治療」が必要になります。円錐切除術、ループ式電気切除術、レーザー蒸散術、が推奨される治療です。年齢や病状によりこれらのどの治療法を選択するべきかが異なります。妊娠の希望がない場合は、子宮摘出を行う場合もあります。
ちなみに、電気焼灼法、ラジオ波焼灼法、マイクロ波焼灼法、凍結療法などの治療法は明確なエビデンスがないため、推奨されません。一部の医療機関では「電気焼灼」「ラジオ波焼灼」「マイクロ波焼灼」を「レーザー蒸散術」と称して保険診療しているところがありますが、これは医学的にも倫理的にも不適切です。電気焼灼・ラジオ波焼灼・マイクロ波焼灼とレーザー蒸散術は、似て非なるものです。
浸潤癌(扁平上皮癌/腺癌)の場合は、ただちに大学病院やがん専門病院などの高次機関で更なる検査や集学的治療(根治手術、放射線治療、抗がん剤治療)が必要になります。
*CIN2でハイリスクHPV(16型・18型・31型・33型・35型・45型・52型・58型)が陽性の場合や、CIN2が1年以上遷延している場合
がんの「手前」の異形成で治療することが重要
子宮頸がんは、子宮頸部異形成/上皮内腫瘍を経て、やがて浸潤がん(本格的ながん)に進行しますが、がんになる手前の段階(前がん病変)で発見することができます。前がん病変(=子宮頸部異形成)で治療を行うことによって、がんに進行する前に、完治することが可能になるのです。これは他の臓器のがんの治療と大きく異なる利点と言えます。しかし、前がん病変(子宮頸部異形成)は自覚症状を示すことは極めて少なく( ほぼないと言ってもよい)、頸がん検診を受けなければ見つけることはできません。
当院は子宮頸がんの精密検査と治療を行う専門施設
当院は子宮頸がん検診はもちろんのこと、精密検査、異形成の治療まで、熟練した婦人科腫瘍専門医・細胞診専門医が一貫して行います。大学病院やがん専門病院と同等もしくはそれ以上の高い質の診断と治療を行います。検診結果の意味、精密検査の結果の意味、治療法の選択、その後の妊娠や出産への影響、再発リスクの評価など、詳しくかつ丁寧に説明いたします。まずはお気軽にご相談ください。
当院で行う外来日帰り手術の子宮頸部レーザー蒸散術については、こちらをご覧ください。子宮頸がん・子宮頸部異形成の更なる詳細については、こちらをご覧ください。
文責 小宮山慎一
こみやまレディースクリニックあざみ野副院長
東邦大学医学部産科婦人科学准教授
慶應義塾大学医学部産婦人科学客員准教授