がん遺伝子診断・がんゲノム外来
がん遺伝子診断・がんゲノム外来
がんゲノム医療とは、がん細胞のゲノムを調べて、遺伝子の変化をもとに患者さん一人ひとりのがんの性質を知り、適切な治療を選択することです。同じ日本人でも、大きな人・小さな人、丈夫な人・病弱な人など、様々な個体差があるように、がんにも様々な個体差があることがわかってきました。その個体差を決めているのが、ゲノム(遺伝情報)なのです。
ゲノムとは、一人ひとりが持っている遺伝情報のことです。ゲノムの本体となるのがDNAで、ヒトゲノムのDNAは32億塩基対と言われています。このうち、タンパク質の設計図の部分を「遺伝子」と呼びます。ヒトゲノムには約23,000個の遺伝子が含まれています。遺伝子を元に作られた「タンパク質」が身体の中でいろいろな働きをしています。そのため、遺伝子に異常が生じると正しいタンパク質が作られず、ひいては病気の原因になります。近年の研究から、がんも遺伝子の異常が原因で起こる病気であることが判明しました。がんは様々な遺伝子が異常を来すことにより、「正常な細胞」が「がん細胞」に変化することによって起こるのです。がんを引き起こしやすい原因となる遺伝子を「がん関連遺伝子」といい、現在までに200個以上の重要ながん関連遺伝子が見つかっています。
当院では最先端医療であるがん遺伝子パネル検査(包括的がんゲノムプロファイリング検査)およびがんctDNA 検出システムを用いたがんの遺伝子診断を行っています。これらの検査に基づく医療は、究極の「個別化医療」「オーダーメイド医療」「精密医療」と言えます。
当院の副院長はがん治療のエキスパートであると同時に、ゲノム医療のスペシャリストです。大学病院などで行っている質の高いがんゲノム医療と同等レベルの検査を、身近で受けることができます。当院はレディースクリニックですが、がん遺伝子診断は性別に関係なく、がん種に関係なく実施しますので、お問い合せください。
当院では最先端の医学であるがん遺伝子パネル検査(包括的がんゲノムプロファイリング検査)として「Guardant360®」を、がんctDNA検出検査として「Guardant RevealTM ctDNA検出システム」を、それぞれ実施します。これらにより、がんの性質の診断、がん治療への応用(抗がん剤や分子標的薬の選択)、再発の早期診断等が可能になります。これらはいずれも血液検査で行えるため、非常に簡便で侵襲性が低い上に、検査提出から結果の判明までおよそ3週間と非常に早く情報を得ることができます。なお「Guardant360®」および「Guardant RevealTM ctDNA検出システム」は自由診療(自費診療)となります。
当院でがん遺伝子検査を受ける恩恵が大きいと考えられるのは、以下のいずれかに該当する方です。性別に関係なく、がん種に関係なく実施しますので、お問い合せください。
婦人科がん患者の方は以下のような特徴があることから、がんゲノム医療との相性が非常に良いと言えます。
●婦人科がん患者は全身状態が良好な方が多く、様々な治療を許容できる
●特に卵巣がん患者は一般に治療経過が長くなり、標準治療のみならずその他の治療を検討することが多い
●がんの病勢を制御できれば、万が一がんが根治できなくても、長期の担癌生存(がんと共に生きる)が期待できる
●個別の遺伝子異常(ドライバー遺伝子の異常)を認めなくても、ゲノムの不安定性(LOH、HRD)やマイクロサテライト不安定性(MSI-high)や腫瘍遺伝子変異量増多(TMB-high)を示すことが多く、これらの異常は有効な分子標的薬治療や免疫チェックポイント阻害薬治療に結びつきやすい
●婦人科がん患者では、遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)やLynch症候群(子宮体癌)をしばしば認めることから、二次的所見が得られた場合は、血縁者のがんのリスク評価や早期発見にも寄与できる
●子宮肉腫は”希少がん”であり、そもそも標準治療が存在しない
よって婦人科がんにおいては、がんの遺伝子診断を行う有益性が非常に高いのです。
私(副院長)は大学病院(がん診療拠点病院かつがんゲノム医療連携病院)において、日々がんの診断・治療を行い、さらにがんゲノム医療にも従事し、多くの患者さんに最適で最新の医療を提供しています。しかし、がんゲノム医療やがんの遺伝子診断は、まだまだ身近な医療とは言えず、その恩恵に預かることのできない患者さんが多数存在することを常々憂いておりました。
がん治療の原則は、”最適な治療を、最初から行うこと”です。手術も、抗がん剤も、放射線治療も、分子標的薬も、免疫チェックポイント阻害剤も、抗体薬物複合体(ADC)も、「早い段階」のほうが治療強度を高めることが可能であり、より治療効果を上げることができます。そして「早い段階」のほうが患者さん自身の体力や全身状態が保たれており、強い治療にも耐えられます。
一方でがんは再発するとよりタチの悪い(より悪性度の高い)タイプに変化するので、治療が効きにくくなります(これを耐性と言います)。また患者さん自身も、がんの経過が遅い段階になればなるほど、身体が疲弊してくるばかりでなく、それまでの治療による副作用や合併症により、強い治療に耐えられなくなってきます。
さらに近年の研究により、がんは遺伝子異常の違いによりその性格や予後が大きく異なることが判明し、遺伝子異常の相違を踏まえて、個々の患者さんごとに治療や管理を最初から個別化するべきだということがわかってきました。つまり、がんの経過の「早い段階」からがんの遺伝子診断を行い、その性格や予後の良し悪しを踏まえ、より治療効果の高い治療を、初回からガッチリ行い、その後の管理もしっかり行うほうが理にかなっているのです。がん治療において”良い治療は後から行う”というのは、戦争における”戦力の逐次投入”と同様に、戦術としては不適切です。
しかし保険診療で行われるがんゲノム医療は、その適応が「再発後の難治性がんで標準治療が終了した方」という規定があり、ごく限られた患者さんにしか届けることができないと同時に、がんの経過の「かなり遅い段階」にならないと導入することができないという大きな欠点があります。つまりより早い段階から行ったほうが効果の高いがんゲノム医療は、現実の保険診療では一切できないということなのです。
保険診療にとらわれず、もっと早い段階から、もっと身近に、もっと積極的に、がんゲノム医療やがんの遺伝子診断に基づく医療を提供したいという思いから、「がんゲノム外来」を開設しました。
当院の「がんゲノム外来」は、最先端医療であるがん遺伝子パネル検査やがんctDNA 検出システムを用いて、がんの遺伝子診断を行い、その結果を実際の医療に反映するための”提言”を行う外来です。当院で行った遺伝子診断の結果に基づいて、現在おかかりの医療機関で行っている治療に反映していただくアドバイスをさせていただきます。
保険診療でがんゲノム医療を実施できる施設は非常に限られており、それらの施設以外では現実的に実施困難です。当院で検査を行うことによって有益な情報が得られた場合は、患者さんとおかかりの医療機関にその情報を適切に開示しますので、実際の診断や治療に取り入れていただくことが可能です。検査結果に加えて、がんゲノム医療の専門家としての意見や提案を「診療情報提供書」としてお渡しいたしますので、それに基づいて主治医と十分に相談し、より良い医療を行っていただければ幸いです。
当院のがんゲノム外来の流れを以下にお示しします。当院はレディースクリニックですが、がんゲノム外来は性別に関係なく、がん種に関係なく、受診していただくことができます。完全予約制ですので、あらかじめ電話でのご予約をお願いします。なお、がんゲノム外来は原則として自由診療(自費診療)となります。
*費用については「料金表」をご覧ください。
がん遺伝子パネル検査(包括的がんゲノムプロファイリング検査)やがんctDNA検出システムには利点が多い反面、以下のような注意点があります。よって検査を行う際は、これらも踏まえた上で実施する必要があります。
婦人科がん患者の方は以下のような特徴があることから、がんが再発してしまってもその後に適切な治療を受けることによって、長期間の延命を望むことが可能です。
●婦人科がん患者は全身状態が良好な方が多く、様々な治療を許容できる
●特に卵巣がん患者は一般に再発後の生存期間が長く、治療意欲も高い
●がんの病勢を制御できれば、長期の担癌生存(がんと共に生きる)が期待できる
●個別の遺伝子異常を認めなくても、ゲノムの不安定性(LOH、HRD)やマイクロサテライト不安定性(MSI-high)や腫瘍遺伝子変異量増多(TMB-high)を示すことが多く、有効な分子標的薬治療や免疫チェックポイント阻害薬治療に結びつきやすい
●婦人科がん患者では、遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)やLynch症候群(子宮体癌)をしばしば認めることから、二次的所見が得られた場合は、血縁者のがんのリスク評価や早期発見にも寄与できる
●子宮肉腫は”希少がん”であり、そもそも標準治療が存在しない
よって、婦人科がんはがんゲノム医療との相性が非常に良いと言えます。そして、がんが再発してからもあきらめずに治療法を模索することは意義が大きいと考えられます。
「あきらめない婦人科がん医療」の身近な相談先として、当院のセカンドオピニオン外来およびがんゲノム外来をご活用ください。