ホルモン補充療法のエストロゲン製剤は経皮タイプが安全です
- 2026年11月1日
- 閉経に関すること,更年期に関すること,こみやまレディースクリニックあざみ野に関すること
更年期障害の治療に用いられるエストロゲン製剤とプロゲスチン製剤は、通称「ホルモン補充療法(HRT)」と呼ばれています。このうちのエストロゲン製剤は、用いる製剤タイプによって安全性・副作用が大きく異なることが指摘されています。とりわけ心血管系障害(静脈血栓症/肺塞栓症、心筋梗塞、脳卒中/脳梗塞)は頻度は非常に低いものの、ひとたび発症すると命に関わる重篤な有害事象です。今回はデンマークにおける疫学研究において、改めてその事実が確認され、トップジャーナルであるThe BMJ(British Medical Journal)の最新号に公表されました。その内容を概説します。
閉経後のエストロゲン補充療法と心血管系障害の関連性
この研究では、2003-2021年にデンマークに居住する50-69歳の全女性のうち、エストロゲン製剤(エストラジオール)を使用している女性と非使用の女性における静脈血栓塞栓症、虚血性脳卒中、心筋梗塞との関連を、ケースコントロール・スタディという方法で調べました。ちなみにデンマークを含む北欧諸国は、人口が少なく、社会保障制度が確立されており、国民の社会的・経済的・医療的レベルのバラつきが少なく、統計のデータベースがきちん作成されていることから、質の高い疫学研究が可能であることが知られています。そこから得られた研究結果は信頼性の高いものが多いため、医学界では常に注目されています。
経口エストロゲン製剤の使用は静脈血栓塞栓症・脳卒中・心筋梗塞のリスクが高まる
経口エストラジオール(単独またはプロゲスチン併用)の使用は、非使用と比べて、静脈血栓塞栓症(ハザード比1.6、95%信頼区間1.5-1.8)、虚血性脳卒中(1.3、1.2-1.4)、心筋梗塞(1.2、1.1-1.3)と、それぞれの発生リスクを上昇させました。特に経口エストラジオールの使用は、投与量や投与期間に関係なく、静脈血栓塞栓症の発症率を上昇させました。また1mg/日を超える高用量の経口エストラジオールを1年以上使用することは虚血性脳卒中および心筋梗塞の発症率上昇と関連し、5年超の使用では脳卒中と心筋梗塞の発症を大きく増加させました。
経皮エストロゲン製剤の使用は静脈血栓塞栓症・脳卒中の発症リスクを上げない
一方で、経皮エストラジオールの使用は、非使用と比べて静脈血栓塞栓症と虚血性脳卒中の発生リスクを上昇させませんでした。ただし経皮エストラジオールの「周期的」併用療法では心筋梗塞リスクの上昇がみられました(ハザード比2.1、95%信頼区間 1.1-4.1)。
閉経後のホルモン補充療法では経皮エストロゲン製剤を選ぶべきである
この研究からわかることは、エストロゲン製剤は投与経路によって副作用の発症リスクが異なるということです。そして閉経後のホルモン補充療法においては、経皮タイプのエストロゲン製剤である貼付剤(テープ剤)や塗布剤(ゲル剤)を用いるべきであるという点です。経皮エストロゲン投与の場合、肝臓での初回通過効果を回避するため、経口エストロゲンと比較して凝固因子への影響が少なく、さらには肝機能への影響も少ないと考えられており、研究結果を裏付けるものと言えます。加えて、プロゲスチンとの併用療法を行う場合は、周期的併用療法ではなく、持続的併用療法を選ぶべきであるということです。
当院ではホルモン補充療法(HRT)を適切に行います
当院ではエビデンスに基づいてホルモン補充療法(HRT)を適切に行います。閉経後の場合は経皮エストラジオール製剤である貼付剤(エストラーナ・テープ)や塗布剤(ル・エストロジェル)およびプロゲスチンの持続投与を行います。更年期障害を克服し、自分らしく、健やかに、生き生きと暮らすために、HRTをご活用ください。
出典:Berggreen J, et al. Contemporary menopausal hormone therapy and thrombotic disease: nationwide nested case-control study. BMJ. 2026; 394: e100688.
文責 小宮山瑞香
こみやまレディースクリニックあざみ野院長